大阪高等裁判所 昭和28年(ラ)53号 決定 1953年6月29日
抗告人 高田一男
主文
原審判を取り消す。
本件を京都家庭裁判所に差し戻す。
理由
本件抗告理由の要旨は、抗告人がその妻花子と協議上の離婚をするに至つた事情について、原審のなした事実認定を非難し、離婚をなすに至つた責任は妻花子にあつて、抗告人はむしろ被害者であるから、財産を分与すべき筋合でない。また長男正夫の養育料についてはその額が不相当なばかりでなく、抗告人のみにこれを負担せしめた原審判は失当であるというにある。
先ず財産分与の請求について考えて見るに、協議上の離婚をした者の一方が相手方に対して財産分与の請求をした場合、家庭裁判所は一応協議離婚成立当時における相手方の財産の総額及び当事者双方がその協力によつて得た財産の有無、これあるときはその額を認定し得る程度に審理をつくした上、その他諸般の事情を考慮して、財産を分与させるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定むべきものであるところ、原審判においては本件協議離婚成立当時における相手方の財産の総額をいくらと認定したか不明であるばかりでなく、当事者双方の協力によつて得た財産の有無についても何等判示するところがなく、本件記録を精査するもそれ等の認定が困難であつて、その点に関し原審判は審理不尽の違法があるものといわなければならない。
次に養育料の請求について考えて見るに、右請求が抗告人の長男である高田正夫の扶養料の請求であれば、高田正夫自ら審判の申立をなすべきであつて、申立人である高田花子には当事者適格がなく不適法な申立といわなければならず、右請求が高田花子が正夫を引き取つて養育するに必要な費用を自己の債権として請求するのであれば、家事審判法第九条所定の審判事項に該当しないので、右請求について調停が成立しなかつたからといつて審判の申立があつたことにはならないので、この点に関する原審判は違法であつて取消を免れないものといわなければならない。
よつて本件について家事審判規則第一九条を適用し、主文のとおり決定する。